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恋はいつでも平行線【完結】
第14章 *十四*
 覚えのない、赤い手形が残るカーディガンが気持ちが悪くて、脱ぎ捨てたのがいけなかった。

「お、やる気になったのか」

 すっかり忘れていたけれど、今、部屋には臣哉がいたのだ。

「そんなわけ、ないじゃない! これを見なさいよ!」

 わたしは床に投げ捨てたカーディガンを指さした。
 だけど床の上に落ちたカーディガンは、赤い手形が隠れて、見えなくなっていた。
 臣哉は視線を向けただけで、拾って確認をすることはなかった。

「オレとやりたいから脱いだんだろう?」
「違うわよ! 拾って確認しなさいよ! 赤い手形がついてて、気持ちが悪いんだから!」

 そう言っても、臣哉は確認をするどころか、にやにやと笑みを浮かべて近寄ってきた。

「柚希もオレと同じなんだろう?」
「……同じって、なによ」

 こんな男と同じと思われているとは、屈辱なのですが!
 こいつのことだから、絶対ロクなことを考えていない!

「昨日、あれからずっと、柚希のナカの気持ちよさが忘れられなくて、つらかった」
「なに言ってるのよ、強姦魔!」
「それに昨日、親父から聞いたけど、求婚しに来たんだろ?」
「…………は?」
「もうちょっと遊びたかったけど、柚希だったらオレは別にいいぜ」

 昨日のあの話、なにをどう聞いたらそう思えるのか、だれかわたしに教えてくれますか。
 まさかの斜めの解釈に、唖然としてしまった。
 しかも。

「オレ、親父の跡を継ぐの、嫌だったんだよな。敬人さんが店を引き受けてくれるっていうし、柚希が養ってくれるんだろ? 三食昼寝付きの理想の生活だなんて、贅沢すぎるよな!」

 本気の本気で、唖然としてしまった。
 なにをどうとれば、そう受け取れるの?
 しかも。

「────っ!」

 ベッドに上がり込むと、わたしの身体を強く抱きしめてきた。
 そうされると、左腕は痛いし、昨日の行為のせいで節々が痛くて悲鳴を上げたくなったのに、さらに臣哉はわたしのあごをつかむと、顔をぶつける勢いで近づけてきて、唇を重ねてきた。

 色気もなにもあったものではない、キス。

 臣哉に処女を奪われただけではなくて、ファーストキスまで……!
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