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恋はいつでも平行線【完結】
第17章 *十七*
 リンティから最寄り駅で地下鉄に乗り、新幹線に乗った。
 新幹線の中は字幕ニュースが流れていたからそれをぼんやり見ていたらそれほど時間は気にならなかった。
 そのニュースの中で『婚約者連続殺人』という記事が気になったけれど、在来線を乗り継ぐために降りた駅で新聞が買えなくて、そこから先はひたすら外を眺めて数時間。

 一日に数便しかないローカル線の最終でたどりついたところから、さらに本日の最終バスに乗って、ようやく市町村合併で町になった実家の近くまでたどり着いた。
 山の中の小さな、かつて村と呼ばれていたこの地区は、それなりに名前は知られている──らしい。

 わたしにはただの退屈な場所にしか思えなくて、昔からずっと、ここから飛び出したくて仕方がなかった。
 好きか嫌いかと聞かれたら、好きという答えしかないけれど、それでもここはわたしには居心地が悪くて、窮屈だった。
 だから帰ってくるのは、忙しい秋祭りの時期だけだと思っていたのだけど……。
 まさかそれ以外でここに帰ってくるとは思ってもいなかった。

 バスに乗る前からすっかり暗くなっていることは分かっていたけれど、降りるとさらに暗くて、ここはリンティの近くとはまったく違う場所だと、改めて分かった。
 去年の秋祭りに来たときと変わっていないここに、少しため息を吐きながら、とぼとぼと実家へ続く道を歩いた。
 暗くても、それまで住んでいた場所。迷ったり、道を外れるなんてことはない。

 バス停から実家までの道の左右に見えるのは、神田家で作っているお酒のために育てられているお米が植えられている田んぼたち。
 田んぼの持ち主は、神田家ではなく、ここに住んでいる人たちのものだ。
 神田家は周りの人たちにお願いして、お酒用のお米を育てて貰い、買い取っている。
 さらには、酒造りのための杜氏もここの人たちだし、昔から住んでいる人たちは、神田家となんらかの関わりがある。

 村だったここは、神田家を中心に回っている。
 そんな窮屈なところで、家を継ぐわけでもなく、巫女としても中途半端でしかないわたしは、とても居づらかった。
 それは伯父さんも、兄も一緒で、だからこそ、わたしたちは外へと出て行った。

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