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幼い獣たちは愛を知る
第1章 愛なんて知らない
 俺は別にいいんだ。頭から精液かけられようが、お尻が裂けようが、腹が立つだけで洗ったり時間がたったりすればなんともなくなる。そんなことじゃ俺の心には届かないから。
 でもアストンはだめだ。アストンは体を汚されても服が汚されたのと同じくらい怒らないけど、心が剥き出しで、すぐに傷つく。
 俺自身には体も含むけど、アストン自身は心だけなんだ。あいつの体はあいつの所有物でしかない。
 こないだはひどかった。かなり年上の女の政治家に一晩貸し出されたときだった。
 別に規約違反があったってわけじゃない。ただ俺ら、テレビで映されるような恋人同士みたいにしてセックスさせられたんだ。
 まず、ソファでアストンの目を見て髪を撫でながら優しくキスをして、手を取ってベッドに連れて行ってそこでまたキス。押し倒しながらもキス。準備してきてあるのに、優しく優しくお尻をほぐして中だけでイかせて、ゆっくり抱き締めてやりながらも体が冷めないうちに挿入。
 どこがキツいの? って思うよね。俺は別にキツくなんかなかった。
 だけど、俺らはほんとはそんな仲じゃない。恋人たちの気持ちなんてわかりもしない。
 俺にとってのアストンも、アストンにとっての俺も、生活環境が整ったうえでの心の潤いなんかじゃなく生命維持に直接関わってくる、そんな存在なんだ。そんな関係しか知らない。
 俺はお芝居してればいいからなんともなかった。むしろ楽だった。擦れば気持ち良くなってイけるし、終われば『気持ち悪いやつだった』で終わりだ。
 でもアストンはそうはいかない。受け入れる方だから、気持ちがあるのとないのじゃ体の受け入れ態勢が全然違ってくる。だからそうしなきゃと思うと恋人同士の気分になる。なってしまう。心を守るものとして体が機能しないから、お芝居するのも心でしないとできないんだ。
 その場はいい。最後に俺に挿れられながらおばさんを抱かされても、本物の恋人にすがるみたいに俺に「やだやだ」って泣けばいい。
 問題は帰ってからだ。数時間で入れ替わった矛盾した気持ちが、心の器を溢れて体に逆流する。
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