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難問 -兄妹の領域境界-
第14章 旅人算の答え合わせ
その日も、いろんな観光地をみんなで訪れた。
何も考えたくない私は、無駄にはしゃいだ。
兄の態度が、周りに避けていることがわからない程度に無難でやり過ごしていることに気づきたくもないのに気づいてしまう自分が嫌だった。
旅館に戻り、昨日とは違ったおいしさの会席料理を食べたけれど、昨日ほどおいしさを感じられなかったのは私の心のせい。
昨日のように、家族で温泉まで向かい今日の疲れを癒す。
「ふぅ・・・・」
体を洗い、温泉につかると気分が落ち着いてくる。
目を閉じて、温泉の熱を体に感じる。
「ねぇ、未由」
「へ?」
目を閉じていた間にいつの間にか母が隣にいた。
「未由は、学校に好きな人とかいないの?」
大恋愛の末結婚した母は恋愛話が好きで、たびたび聞かれる。
いつも適当に流しているけど、今日の私には耳の痛い話。
「うーん、学校にあまり素敵な人がいないんだよね」
「それは残念ね。未由もてそうなのに」
「私はお兄ちゃんと違ってモテないよ」
「えっ、佑人モテてるの!?顔がいいのは認めるけど、あの態度だからもてないと思ってたわ」
「確かに。でも、私の同級生でも結構ファンの子いたよ」
「意外。未由のほうがモテると思ってたのに」
「ぅー、告白されることはあるんだけどね・・・。好きって思ってないのに付き合うわけにはいかないし」
「じゃぁ、付き合ってる人はいないのね」
「残念ながらね」
「そう・・・。今日ちょっと様子が変だったから、電話かなにかで喧嘩でもしたのかと思ってたわ」
「相手がいないのにできないよー」
(心が通じたと勘違いはしたけどね。しかも喧嘩すらできてないし)
「未由はすぐ誰かのために我慢してわがまま言わないところがあるから、たまにはわがまま言ってもいいのよ」
「えっ」
母はにっこり笑って、先に湯船を出た。