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難問 -兄妹の領域境界-
第2章 夏休みの宿題 別解
「この問題やってみて」

ざっと問題を見て、特に重要そうな数問に丸を付けた後、問2を指さす。

「はぁい」

問題を読み、ノートに書き込みを始めた未由の髪が重力に引っ張られ肩の上から滑り落ちる。
エアコンのある部屋にいたため、髪を下したのだろう。
そんな何気ないことすら、未由だというだけで特別なことのように目を奪われる。

(何の拷問だよ・・・)

日々湧き出る感情が心の器からあふれ出る日は近いのかもしれない。
決して器から出してはいけないものだと気が付いているのに、それでも自分の中で大切に慈しむ。

ふと、未由の手が止まる。問題文とノートを見比べている。

「そこ、公式に当てはめるんだけどどれかわかる?」

「うーん、さっきから探してるんだけどコレっていうのが・・・」

二人きりで会話をしていると、つい柄にもなく優しく饒舌になりそうになる。
かけた声を自分で聞いて、苦笑が漏れる。

「あーっ、笑った!バカにしてるでしょう!」

「違うよ、この公式に当てはめて解けば答えが出るから」

そんな自分に気づかれたくなく、畳みかける。

「解き終わったら、そのまま次に進んで。」

これ以上近づくとヤバイ。
日々増していく感情の量に、器が警告を発した。

逃げるように未由から離れ、そのままクッションを枕に横になる。

「もぅ、ごまかしたな!職務放棄はんたーい」

文句を言いながらも、ノートを埋めるかすかな音が聞こえてくる。
俺は反論せずに目を閉じる。

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