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難問 -兄妹の領域境界-
第20章 積まれたテキストと兄達の苦悩
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講義が終わり、大学内のいつものベンチに座っていると佑人がこっちに向かってくる。

「よぉ、久しぶり」

冬休みが終わった初日、久々に見る佑人はどこか上機嫌だなと思いながら声をかける。

「ふっ、そうだな、久しぶりだな和也」

ふと立ち止まりどこか遠くを見るような表情で佑人が言葉を発する。
いつもと大分違う雰囲気。これは何かあったな。

「ずいぶん上機嫌じゃん、冬休みにイイ事あった?」

「ん、家族で旅行と炬燵置いたくらいかな」

ずいぶん喋るな。いつもの無口さはどこに置いてきた。
表情も心なしか緩い。まさか・・・な。

「家族旅行ねぇ、妹ちゃんの浴衣姿かわいいだろうなぁ」

「当たり前だ、お前には一生見せないが」

おい、お前誰だよ、本当に佑人かよ。
いつもなら、「さなぁ」とか「関係ねぇ」とかいうよな?

「佑人、お前どうしちゃったんだ?」

「は?」

意味が分からないという顔をしている。自覚なしかよ。

「あー、イイことかはわかんねーけど色々興味深かったな」

冬休みの間にいったい何があった・・・。

「奈月ちゃんの視点にはなかなか興味深かったよ」

「え、奈月?お前奈月と接点あったのか?」

思わぬ名前を出され、動揺してしまう。

「何言ってんだ、お前も一緒に何度も会ってるだろ。高校も部活も一緒だったし」

「いや、それはそうだけど個人的なやり取りはずっと躱してただろ」

奈月の佑人へのアピールはかなりあからさまだった。
それなのに、未由ちゃんとどんどん仲良くなっていったのには驚いたが。

「和也、奈月ちゃんの為になるテキスト読み終わったから返しといて」

おい、本の貸し借りまでするようになったのかよ。
っていうか、奈月とテキストという言葉が結びつかない。
下手すりゃ学校の教科書すらどこにあるかわからないぞ。

「とても参考になったってお礼言っといて」

は?参考になった?お礼?

「あいつがお前のためになるようなテキストなんて持ってるのかよ」

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