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難問 -兄妹の領域境界-
第20章 積まれたテキストと兄達の苦悩
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和也が玄関を開けると、ちょうど奈月がいた。

「ただいま」

「おかえり」

なぜかお互いよそよそしい。

「兄貴、今日学校だったの?」

「あぁ」

「佑人さんに会った?なんか言ってた?」

これをどう説明しろと?佑人はもう奈月に伝えたのだろうか。

「あぁ、言ってたよ」

「えっ、なんて言ってたの!?」

いつになく真剣な奈月。一体どういう話になってるんだ?

「とても参考になったからお礼言っておいて、だとよ」

「へ・・・?」

呆気にとられている。何か違ったか?

「場所とか日にちとかは・・・」

「何?デートでもすんの?」

いつの間にそんな話をするようになったんだ。
ってか、未由ちゃんどうすんだよ。
苛立ちに勢いを任せ、預かった本を突きつける。

「デートの調整は自分でやって、とりあえず預かったものは渡したから」

「え、やだなんでこれ兄貴が持ってるの」

「知らねぇよ、佑人が渡してきたんだよ」

「中・・・見た?」

「・・・っ」

袋にすら入っていない重ねられただけの本、詰まる返事。
見たといっているようなものだ。

「っぅ・・・」

普段涙なんてものには縁などなさそうな奈月の目から涙が溢れている。

(何なんだよ・・・)

居た堪れないとばかりに、その場から奈月が自分の部屋へと走り去る。

そのまま家に入る気になれない俺は、玄関を出て適当に年上の女の番号を探しその日は家に帰らなかった。
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