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難問 -兄妹の領域境界-
第20章 積まれたテキストと兄達の苦悩
「未由が夏樹ちゃんにとある本を借りたいとねだった」

俺の言葉に驚いて未由の体に緊張が走るのが伝わってくる。

「借りてきた本を俺が見つけて没収したけど、奈月ちゃんの連絡先が分からないのと、未由に余計な知識をつけたお仕置き代わりにちょっとしたいたずら心で和也経由で返した。まぁ、いちいち会うのが面倒だったっていうのもあるけどな」

『なんだそれ・・・』

「奈月ちゃんが俺に見られたって思ったら少し恥ずかしがるだろうってな」

『・・・・・・』

「お前ならあの程度の本、何事もなかったように渡すか茶化して終わると思ったんだが」

『ハッ、奈月に合わせる顔がねぇな』

「辛いままで放置するのか?さっさと謝れ」

『あぁ、そうだな』

「こっちもさっき二人で謝った。傷ついたままいられるとこっちも胸糞悪ぃ」

『わかった』

「用事はそれだけだ、じゃぁな」

言い捨てて電話を切る。

「ちょっと、お兄ちゃん!私がねだったってどういう!」

「すまん、そうしとかないとまずい気がした」

「そっか・・・」

思うところがあったのか、それ以上聞いてこなかった。

未由を持ち上げ、自分のほうを向かせる。
抱き寄せて、自分に未由の体を寄り添わせる。

「お兄ちゃん?」

「大丈夫か?」

「うん、いろいろあってびっくりしたけど大丈夫」

未由の体から力が抜け腕が俺の背中に回される。

「お兄ちゃんこそ、1年分ぐらい喋ったんじゃない?」

「だな、まぁ無口でいる必要もなくなったがもともとあまりしゃべりたい方ではないからな」

「えっ、どうい・・・」

何かを問いかけようとした未由の唇をふさぐ。
続けていると、もっと欲しくなってしまうから・・・。

「明日も学校だろ、そろそろ寝るか」

「うん」

名残惜しさを込めて最後に一度唇を重ね、自分の部屋へ戻った。
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