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難問 -兄妹の領域境界-
第3章 中学校の小テスト
両親とも身長が高めな未由は、中学1年にもかかわらずすでに160cmまで伸びた。
父親譲りの茶色がかった色素の薄い柔らかいストレートの髪は肩につかないくらいのところで切りそろえられている。
女子の成長は男子のそれとは違い早い。
半年前までランドセルを背負っていたとは思えない、大人びた未由はどうやら1年生には見られていないようだ。

未由は佑人を探すため、のぞく状態からさらに2歩ほど進み片足を教室内へ踏み入れる。

「緑色の上履き・・・えっ、1年生!?」

「マジかよ・・・」

「1年のくせに何しに来たの、生意気じゃない?」

また教室がざわめく。

ざわめきを無視し、私は兄を探す。

(いた、窓際の後ろから2番目か)

佑人はざわめきにまったく興味を示さず、足を机の上で組みけだるげに窓の外を眺めている。

その時、

「し、篠田さん、お客様です・・・」

固まっていた彼が、後半消え入りそうな声で佑人を呼ぶ。
その瞬間、クラスの雰囲気が凍る。

(噛んでるし、篠田「さん」って・・・。お兄ちゃんは一体何をやったんだろう)

窓の外を見ていた佑人は、視線だけ後ろのドアに向ける。
私を確認して、舌打ちをしながらゆっくり足を下して私のほうへ歩いてくる。

(あー、不機嫌な顔がさらに不機嫌になってる・・・・)

「おい、お前なんでこんなところにいるんだよ!」

まるで不良の喧嘩のような凄みを聞かせた声が飛んでくる。
ガタガタッと、教室から後ずさる音した。

目の前まで来た兄を見る。
身長は170cmなのでさほど見上げなくても、目は合う。

「お兄ちゃん、今日傘もって出なかったでしょ?夕方降るってお母さんが言ってたからお兄ちゃんの分も持ってきたよ!」

兄と学校で会話をしていることがうれしく、つい笑顔がこぼれてしまう。
話しかけたときに教室から物音がした気がするけど・・・気のせいか。

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