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難問 -兄妹の領域境界-
第7章 夢の中で解く旅人算
「さぁ、出発よ」
まだあたりは暗い。高速道路の渋滞に巻き込まれないよう早めの出発だ。
真冬の早朝の冷たい空気が肌を刺す。
寒さから逃れるために、車へと滑り込む。
母は助手席に座り、兄と私は後部座席が定位置だ。
寒さに震えていると、ひざ掛けが足の上に降りてきた。
兄がかけてくれたのだ。
「お兄ちゃんありがと」
「ん」
暗くてよく見えないが、心なしか兄の目がいつもより優しい気がした。
すると、ひざ掛けの下の手が兄によってからめとられる。
(あったかい・・・)
その手を握り返し、目を閉じる。
いつもより、鼓動が早い気がする。
それは旅行に対する期待の興奮か、それとも別の理由だったのだろうか。
繋がれた手と鼓動は目的地に到着するまで変わることはなかった。