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難問 -兄妹の領域境界-
第7章 夢の中で解く旅人算
「すごくおいしかったね!」
評判通り、いやそれ以上の会席料理だった。
一品ずつ絶妙なタイミングで料理が出され、工夫が施され手の込んだ料理はどれも感動するくらいおいしかった。
「本当ね、またここに泊まりたいわ」
「今度は二人だけで来ようか」
「二人だけずるいー!」
旅館のインテリアは、土地の特性を生かした空間が演出されている。
日常とはかけ離れた雰囲気に心が魅せられる。
兄は、ガラス張りの窓から明りのともる風流な中庭を眺めながら歩いている。
「それじゃぁ、朝食は8時からだから時間までに食事処にいてね」
浴衣を見事に着こなしている母は、部屋にたどり着くと父の腕をとる。
「はーい、それじゃぁおやすみなさい!」
「オヤスミ」
私たちは二人に挨拶をした後部屋へ向かう。
「本当においしかったね!お肉が口の中で溶けていったよ~!」
「あぁ、母さんがまた来たいっていうのもわかるな」
「だよね!二人だけで行くとかずるい」
部屋のドアを開け、中に入る。
客室も宿のこだわりが随所に見られ、窓が壁の一面をほとんど占め絶景だ。
広々として、掘りごたつや景色を眺めるためのソファーがおかれている。
和室だが、ロータイプのモダンなベッドが二つ並び・・・
カシャン
後ろから部屋の鍵をかける音が未由を現実に戻す。
旅館なのだから、部屋の鍵をかけるのは当たり前。
この部屋には、トイレも洗面所もお風呂も備え付けられている。
(お兄ちゃんと鍵のかけられた部屋で朝まで二人きり・・・)
視界に移るベッドが急に生々しいものに見えてくる。
(いや、前の旅行もそうだったじゃない。せっかくの旅行なんだから満喫しないと!)
気を取り直して部屋の奥に進む。
「うわぁ・・・」
窓からは、雪が被った木々と満天の星空。
星が降ってきそうだ。
「お茶でいいか?」
「うん」
兄がお茶を入れてくれえている間、私は景色に見とれていた。
「ここに置くぞ」
そういって、フラットタイプの広いソファーの横にある小さなサイドテーブルに湯呑を二つ置く。
「ん、ありがと」