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難問 -兄妹の領域境界-
第10章 変数の宣言と値の代入
「ふぅ・・・・」
風呂から出て、冷蔵庫からペットボトルの水を取りだす。
リビングを見ると、酒を片手に両親がいちゃつきながら映画を見ている。
(バカップルが・・・)
二人の邪魔をしないように、階段を上り部屋に向かう。
「とんだ策士だわ」
階段を上っていると上から声が聞こえてきた。
「誉め言葉?」
2階から見下ろしている未由を見て答える。
「そんなわけないでしょ、こっちの身にもなってよ・・・」
階段を上り切り、部屋に入ると未由もついてくる。
「迫真の演技だったよ」
パタンとドアを閉めて、クローゼットからパーカーを取り出す。
「私が途中で気づかなかったらどうするつもりだったの・・・!」
ベッドに腰かけながら、抗議してくる。
「気づかないなんて考えもしなかったな」
未由にパーカーを掛ける。こいつはいつも薄着すぎるんだ。
「・・・っ」
「勉強を見てもらったお礼もちゃんとしたし!」
「どんなお礼だったっけ?」
真っ赤になる未由。
「し、知らないっ・・・いじわる」
未由の横に腰かけ、そのまま俺はベッドに寝転がる。
「そ、それに私すごく傷ついたんだからね!」
「一瞬だろ?」
未由はよく知っているはずだ。俺に未由のことをいろいろ聞いてくる奴なんて存在しない。
基本一人行動かピアノ室にこもっている俺が、和也の前以外、大学でお兄ちゃんと呼ばせたことはない。
「そう・・・だけど、気づいたあと笑いこらえるの大変だったんだから!」
あの震えた声は笑いをこらえてたのか。
「これで堂々と俺の名前呼べるだろ?」
名前で呼びたがっていたのを知っていてはぐらかしてきた。
「そう・・・だけど、っていうかそっちも呼ばれたかったんじゃないの?」
「さぁね」
(呼ばれたかったよ、ずっと)
「未由、さっき名前呼んだとき恥ずかしくて顔あげられなかったんだろ?」
「ぅ・・・・」
図星か。