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難問 -兄妹の領域境界-
第12章 卒業テスト
ガチャン
屋上の扉が開く音がした。
「お兄・・・ちゃん?」
未由だ。
「上だ」
「あ、いたいた。和也さんからここにいると思うよって言われて」
なれた様子ではしごを上り、ちょこんと隣に座る。
「お兄ちゃん、卒業おめでとう!」
いつもの笑顔でお祝いの言葉を伝えてくる。
「あぁ」
おめでたくもなんともないけどな・・・・
でも、未由にそう言われるのは悪くない。
「ずいぶん遅くまでいるんだな」
「ぁー・・・」
「告白でもされてたか」
さっき和也が言ってたしな。
「う・・・ん、もしかして和也さんから聞いた?呼ばれたときにちょうど見られてたみたいで」
「さっきまでここにいたからな」
どうなったのかは聞けない。俺がどうこう言える立場ではない。
「誰かと付き合うとか全く考えてないからいつも申し訳なくて・・・」
そんな言葉にホッとしてしまう。
「学校でお兄ちゃんと会うのも今日で最後だね・・・」
どんな表情でその言葉をつぶやいているのか気になり体を起こす。
「あ、ボタン全部ついてる」
「当たり前だ」
「えーー!すごくモテるから全部なくなって帰ってくると思ってた」
「モテねぇよ」
未由がそっと第2ボタンに触れる。
「本当に全部ついてるんだ・・・」
「ボタンなんかもらって何がいいんだ・・・」
和也の惨状を思い出し、ため息しか出ない。
「それは、好きな人のボタンなら・・・!」
未由もさほど興味ないと思っていたが。必死に訴えるほど好きなやつがいるのか・・・?
思いもしなかった反応に、困惑と怒りと苦しみが入り混じったような感覚にとらわれる。
「あ、えっと女の子ならやっぱりあこがれるものなんじゃない・・・かな」
取り乱したことをごまかすように言葉を選びながら話す。
「そういうもんか」
「多分・・・」
沈黙。
そして、何か言おうとしてはやめ、そわそわしている未由を見かねて声をかける。
「どうした」
「えっと・・・いや・・・」
何を言いよどむ?俺に伝えにくいようなことがあるのか・・・?
明日から離れるという状況が、俺を一層不安にさせる。
「言いたいことがあるなら言え」
「あの・・・」
そういって目をそらす。
悪い話・・・か。