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難問 -兄妹の領域境界-
第14章 旅人算の答え合わせ


ガチャリ

未由が部屋を出て再び鍵がかけられる。

佑人はそっと目を開ける。

「泣かせたな・・・」

誰に聞かせるでもなく自嘲気味につぶやく。

未由が状況を確認している時の衣擦れの音で目は覚めていた。
ただ、夢の中で陥った絶望と現実との境目で混乱しながらも、起きていることを悟られてはいけないと寝ている振りをつづけた。

「全部夢にしてもいい」と俺に言わせた不安の正体は夢の中で現れた。

抱きしめていたはずの未由が壊れていく、砂と化して消えていく、自分のもとを去ってしまう。
繰り返し繰り返し、未由が自分のそばからいなくなる夢を見続けた。
それは、禁断の地に足を踏み入れることによって、男と女としての関係がなくなるだけでなく兄妹としての繋がりも同時になくなるものばかりだった。

『兄妹のままだったらそばにいられたのに』

夢の中で何度も未由に言われ、自分でも思った言葉。
男女の関係になったがゆえに兄妹の関係までもが壊れる様々な状況が夢の中で繰り返された。

未由を大切だと今まで以上に自覚し、触れてしまったがゆえに
あまりにも、自分にとって大きな存在になりすぎた。そして、今後それは想像を絶する速さでさらに大きくなるだろう。
愛しさと比例して失う時の不安が増しあまりにも大きくなりすぎていく。


そんな自分に佑人は気づかないうちに絡めとられてしまったのだ。

自分がどんな目で見られようとかまわない。
全てから未由を守る。

その覚悟はある。

とはいえ、自分も、そして未由も万能ではない。
その綻びから、未由を失う結果になったとしたら・・・?

生きていける自信はない。

失うくらいなら、兄として傍にいたほうがいいのかもしれない。
そう考えるのは簡単だが、想いが強すぎて自分を自ら止めることもできない。

あの言葉は、未由の為を思ってのものだったのだろうか。
それとも、自分の様々な感情の制御できなくなった佑人の、未由へ助けを求める心の叫びだったのか。

それに対する、明解な答えは存在しないのかもしれない。

未由が戻らないうちに、部屋を出る。

自分の前に突き付けられた問題に答えを出せない佑人は、初めて未由から逃げた。



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