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難問 -兄妹の領域境界-
第14章 旅人算の答え合わせ
チャポン
長湯をしてものぼせないように、未由は露天風呂につかっている。
部屋に戻りづらい。
嘘を演じるのが得意な自分も、普段でさえ兄の前ではごまかしきれてない気がするのに、この状態では普通を演じられる気がしない。
覚えさせられた快感を思い出すと同時に、胸に走る痛み。
止まることのない涙。
しかし、朝食の時間が近づき戻らないわけにはいかない。
何とかこらえ、勇気を出して戻った部屋には兄の姿はなかった。
「避けられてる・・・!?」
想像を超えた兄の行動に、胸の痛みは限界に近い。
再び溢れそうになる涙をこらえ、食事処に向かった。
入り口では、先についていた両親がいつも通りかそれ以上に甘い雰囲気を漂わせている。
いつもなら微笑ましいと感じるのに、今日は見ているのがつらかった。
「未由、おはよう。ちゃんと寝れたかい?」
「あら、おはよう。佑人は一緒じゃないの?」
両親が私に気づき声をかけてくる。
「おはよう!よくねれたよ、お兄ちゃんは私が朝温泉に行って戻ったらお部屋にいなかったから先に来ちゃった」
「珍しいこともあるものね」
さして気にしていない茉莉香と訝し気な表情を浮かべている圭人。
「あ、来たみたいね。佑人、お腹すいたわ、早く!」
後ろから足音が聞こえてくる。怖くて振り向けない。
「おはよ、みんな早すぎ」
佑人がそばに来ているが顔を見ることができない。
集まったので、中に入っていく父の後ろにくっつくようについていく。
いつもは兄の後ろだが、今日は視界に入って平常心を保つ自信がない。