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喰われる人妻 菜穂
第12章 喰われる人妻 菜穂(12)
菜穂の返事を聞くと、天野はニンマリとした笑顔を見せた。


「いやぁ良かった、奥さんが話が分かる方で。」


「あ、あの……本当に夫には……」


「ええ、大丈夫ですよ。旦那さんには絶対に知られる事はありませんから、安心してください。」


智明には絶対に知られる事はない。

智明に知られる事さえなければ、今夜の事は自分1人で抱えて墓場まで持っていけば良いのだから。

そうすれば智明や家族を傷つけることはない。

とは言っても、菜穂はまだ迷いを捨てきれていなかった。

菜穂のような一途で真面目な女性にとって、一晩だけとはいえ今まで守ってきた貞操を捨てる事にはやはりかなりの抵抗があるのだ。


「ハハッ、奥さんそんな思い詰めた顔をしないでください。ほら、もう一杯飲みましょう、リラックスできますよ。」


そう言って天野はまたグラスに酒を注いで菜穂に渡してきた。

いっその事記憶が無くなるくらいに酔ってしまえば楽になるかもしれない。そんな想いで菜穂は勧められるがままにグラスに口を付けた。

もう結構な量のアルコールを摂取している菜穂。

さすがに身体が熱く、頭もボーっとしてきた。

横にいる天野に肩を抱かれているのは不快である事に変わりはなかったが、不思議とずっとこうされていると慣れてしまって、そんな感情も段々と薄れてくる。


「で、奥さんはどうなんですか?こっちの方は、好きなんですか?」


太ももを摩りながら聞いてきた天野。でも菜穂は一瞬それが何のことを聞かれているのか分からなかった。


「え?」


「セックスですよ、好きなんですか?」


セックスという言葉にドキッとする。こんな状況だからなのか、今はその言葉が、凄く生々しく感じる。

これから天野とセックスをしなければいけないという現実が一気に近づいてきたように思えて、緊張と共に鼓動が早くなる。


「そ、そんな事聞かれても……」


「ハハ、好きか嫌いかくらい答えるのは簡単でしょ?教えてくださいよ。」


「……私は……ふ、普通です。」


「じゃあ嫌いではないんですね?」


ニヤニヤとイヤらしい笑みを浮かべながら天野は、赤面している菜穂の表情を見つめた。

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