この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
虹の彼方で
第16章 指は絡めたまま
トントントン―――
「ッ!!」
「?」
掌で抑えた口から、甘い声が漏れそうになった瞬間。
ドアを叩く音に、私達は、同時に動きを止めた。
息を止めて固まる私をよそに、
タクミは意地悪く笑って、私の手の甲にキスしてくる。
「やめてっ」
はっと我に返って鋭く制そうとする私を見下ろしながら、片眉を持ち上げて楽しげに笑ってくる…!
トントン―――
「は、はい!」
再びのノックの音に、私はシャツの下のタクミの腕を引っ張り出しながら、
ドア向こうへ返事をする。
「美咲? 起きたか? 飯、できたぞ」
マサさんだ。
帰ってきて、そのまま、私達を呼びに来てくれたのかな。
どっちにしても、ここにタクミがいるのは内緒にしなきゃ。
「黙ってて!」
小声で牽制して、タクミの下から抜け出しつつ「はーい」と返事をする。
「俺は先に下いくけど、お前、来る前にタクミの部屋、声かけてもらえるか?」
「え?」
「ノックしてんだけど、あいつ寝てるっぽくてな」
起きないんだ、という言葉に、ベッドを降りて振り返ると、
タクミは、
もう、そこに居なくて。
え……!
視界を風のように通り抜けたタクミは、
迷いなくドアまで辿り着き、鍵を開けてノブに手をかけようとしてる。
「だめっ……!」
慌てて入り口に近寄った私が止めるより早く、
タクミは躊躇なく扉を開くと、
マサさんに「起きてっけど?」と不敵に笑いかけた。