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虹の彼方で
第2章 イケメンお兄さん
それから、2階にあるシャワーをチラ見して、1階のお風呂も見せてもらって。
トイレが1階にも2階にもあるの、便利そうだなーって思ったりして。
で、キッチンの冷蔵庫の中とか見せてもらったら、中にあるものに名前が書いてあるの。
プリンとかゼリーとかに"たく"とか"春"とか"夏"とか。
名前があるものは、その人のものだから食べちゃだめなんだって。
なるほどなーって思ってたら、冷蔵庫内を眺めてた私の後ろから長い腕が伸びてきて、お兄さんが焼きそばの袋を取り出した。
「おしゃれなもの、作れないよ?」
はにかむみたいに笑いながら料理を始めるお兄さんに、「庶民の味、大好きです」って返したら、出会ってから初めて、お兄さんが声を上げて笑ってくれた。
なんか、ちょっと嬉しい。
微笑みながらダイニングキッチンのカウンターに両手をついて、お料理の様子を観覧させてもらっちゃったんだけど、凄い手際よくて、どこの料理教室かと驚いちゃって。
でも、それを言ったら
「僕より、マサさんの方が上手いよ。あの人、プロ級だから」
だって。
マサさんは、えっと、社会人の人?
流石に、一変に6人の名前は覚えられない。
あ、でも……、覚える必要、ないのかな……。
私、ここに居られないかも、しれないし…。
そんな風に考えて、ちょっと難しい顔してたら、不意に目の前にウィンナーがつきだされた。
「?」
「あーん」
「?? あ、あー」
口を開けたら、お兄さんの指先が、私の口の中にウィンナーのかけらを入れてくれた。
「考え事は、お腹いっぱいになってから。ね?」
微笑むお兄さんは、大きな中華鍋に具を入れると手早く炒めはじめる。
ジューッという音と、立ち上り始める料理の香りに、お腹が空いてたことを身体が思い出してた。
あぁ、ソースの香り、美味しそう…。
「美咲ちゃん、箸、そこから取って、適当に2つ出しといて」
「はい」
うん、まず食べよう。