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虹の彼方で
第18章 7色の夜
「タクミ、翼。俺を刺すなよ」
「刺さねーよ」
「しないって」
いつの間にか、マサさんのちょっかいは終わってたけど、
なんだか、改めて、この家が、好きになってしまって……。
この家にいられたら、楽しいんじゃないかな、と思ってしまう。
(もちろん、不安もあるけど……)
タクミのこととか、ジョニーさんのこと。
それに
考えないようにしてる、あの初日の夜のこと……。
でも、最初にマサさんが言ってくれたんだよね。
―――どうしても出て行きたくなったら、俺に言え。
なんとかしてくれるって、言ってくれたのはマサさんだった。
「あの……」
「ん?」
私がマサさんに顔を向けると、自然と、皆の視線が集まった。
「あの時、マサさんが言ってくれた言葉は、いつまで有効ですか?」
「俺の言葉?」
「どうしても出て行きたくなったら……っていう」
「あぁ、あれな」
珈琲カップを持っていた手を伸ばし、カップをローテーブルに置いたマサさんが、そのまま座り直して、身体を私へ向ける。
「いつでも有効だ。いつまでも」
「……」
低い声でおおらかに笑われて、包まれるみたいで、照れくさい。
小さく笑いながら、微かに顎を引くと、ふっと、視線に呼ばれるみたいに、翼に目を合わせる。
それから、タクミに。
最後に、ジョニーさんを見て、私は、はにかんだまま一つ頷いた。
「もう少し、お世話に、なりたい……です」
「いやっほぉぉぉぉぉぉぉ――――!」
「翼!」
「うるさい」
「静かに」
「ハウスッ」
盛り上がった翼を皆で叱りつけるも、
その声が余程うるさかったのか、
2階から、春樹君と夏樹君まで降りてきて―――。
ジョニーさんが事の次第を説明する間、
マサさんにお説教されてる翼を、笑いながら眺めたりして、
なんだか、ちょっと温かい夜を、過ごしたりしたのでした。まる。