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虹の彼方で
第19章 掌の温もり

机につっぷしたまま、「うー」と唸る私の頭を

前の席に座った彩乃が「よしよし」と撫でてくれてる。

皆様、いかがお過ごしですか。

薄曇りの本日、私は、とても憂鬱です。

理由は、1つ。

「美咲、午後早退しとく?」

「んー……」

「痛み止め飲んでもキツイ時はあるし、生理痛って言わなくても体調悪いって言えば帰れるよ」

「んんんー……」

はい、それ、それです。

生理痛。

お腹の奥の月一おそうじターン。

この痛みって、辛く無い時は全く気にもならないのに、時々、忘れかけた頃に凄いズドーンって重いのが来るんだけど、なんで?

もうちょっと平均して、毎月、"なんとなく痛い"で統一して欲しいんだけど……。

「午後の授業、受けないとして…、帰るとしても、あんた帰れる?」

その問には、かろうじて無言で頷ける。

けど、……授業は、正直つらいかも。

どうしよ……。



「白浜さん、体調悪いの?」

と、上の方から声が聞こえた。

この声は、確か……

「おぐっち。美咲、具合悪いらしいんだけど、早退させてもいいよねー?」

あー、そうだー。

学級委員の小倉君。

勉強もスポーツも出来る、クラスの人気者タイプなんだけど、一部の女子に"あんあん"というアダ名を付けられて茶化されたりもしてる、気取らないタイプの人気者君。

「うん。僕から先生に話しておくから、きつかったら早く帰った方がいいよ」

「ごめん……」

「謝らないで。それより、気をつけて。帰り道で具合悪くなりすぎたら、いつでも連絡していいから」

「ありがと、おぐっち」

男女問わず、誰を相手にしても、恐ろしく誠実な人だから、

過去に他薦枠で生徒会長になりかけたこともあるんだって、分かるわー。

いいクラスに入れて、私ラッキーだったなぁ。

そんなことを考えながら、私は必死に上体を起こすと、涙目で彩乃を見た。

「彩乃……」

「うんうん。分かってる。授業は私がノートとっておく。心配しないで帰りなさい」

「ありがと……」

机の横のカバンを掴む私の頭を、また彩乃が撫でてくれる。

ふぇぇ……、

ほんとに、この生理痛とやらの苦痛は、人生の厳しさを教えてくれるものです―――。



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