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虹の彼方で
第3章 金髪男とひまわり君
その金髪の人を食卓に呼ぶために、城西さんが2階に行ってて…。
あの人が、1階に降りてきたら、また私を追い出す話が始まるのかな、とか、今夜の宿はどうしようとか思ってたら、ぼーっとしてしまって、福神漬を持ったまま立ち尽くしてしまってた。
「美咲?」
急に視界に翼君の顔が割り込んできて、驚いて手から福神漬のタッパーが落ちかける……のを、私の手ごと両手で包み込んで「へーき?」と微笑みかけられた。
心がキュッと跳ねたかと思うと、ほっとして温かくなる。
その横を、内田さんが、私と翼君の頭を手のひらでポンポンと順番に確認するようにして通り過ぎる。
「翼、美咲。早くサラダと福神漬をテーブルに出せ」
「はーい」
「あ、はい」
そうだった、と焦った感じでサラダボウルをテーブルに出す翼君につづいて、私も福神漬けを出すと、8人がけのテーブルを見回した。
双子君達がサラダを人数分に取り分けてくれてる。
カレーとサラダ、福神漬。
定番だけど、皆で食べたら、とっても美味しそう。
けど……、私は、その"皆"になれるのかな……。
「美咲は、ここだ」
「はい……」
てっきり一番端っこかと思ったら、4人席の壁から3つ目の席だった。
おずおずと座ると、左隣に翼君が、一つ飛ばして右隣に内田さんが腰掛けた。
え?
私の隣、あの人じゃない、よね?
向かいに双子くん達が穏やかに腰掛けた時、階段を降りる足音が……2人分、聞こえてきた。
「あ、あの……」
私、金髪の人の隣は怖くて、と内田さんに言おうとしたら、
目があった最年長のお兄さんは、ふっと微笑んで頷いてきた。
え? 何?
確認するより前に、リビングの扉が開き、足早に戻ってきた城西さんが、私の隣に腰掛けて。
あの、金髪の人は、私の右斜め前に空いた席へ、無言のまま腰を降ろした。
マサさんを見ると、視線で金髪を示してから、頷いてる。
(嫌がるって、知ってたのかな?)
微かに安堵して、でも、そこかしこに不安も残る、緊張のディナータイムは、そうして幕を開けた。