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虹の彼方で
第3章 金髪男とひまわり君
「あ!! あ!! まじ? 美咲…って、もしかして、マジ? 女子だったってわけ?」
その声に驚いている私達の前で、彼はヒップホップを歌うラッパーみたいに、指先を何度も空中で動かして、私を指差しつつ尋ねてくる。
「あ、う……、はい」
勢いに押されて頷くと、「そっか」と花が咲くみたいに満面の笑みを浮かべられた。
スタスタ歩み寄った彼が、座ったままの私に右手を差し出してくる。
ちょっと汗かいてるのか、前髪が額に張り付いているのが、何か色っぽいなぁと思ってたら、右手をひらひら振られた。
えっと……、握手、かな?
おずおずと右手を出すと、しっかりと温かい手で握りしめられる。
「ツバサ。トガミ ツバサ。よろしく」
「あ、白浜美咲、です」
「そっか。美咲って、やっぱ女子だったんだなー。ようこそ、クルルン荘へ」
にっこりと笑う彼の笑顔は、ひまわりみたいだった。
それから、日が暮れて。
クルルン荘(通称らしい)に、残り3人の住人も帰ってきた。
今日の夕飯当番が翼君らしくって、「美咲、カレー作るの手伝って」と声をかけられて、一緒にカレーを作りつつ、私はずっと、ここに泊めてもらえるのかな、ってことだけ考えてた。
ダイニングに併設した食卓には、なんだか存在感のある大人の人と、どう見ても見分けられない双子の男の子達が座ってる。
大人の人は、内田将人(うちだ まさと)さん。黒髪をオールバックにしてるんだけど、すっごい似合ってて大人の男の人という感じ。
双子くんは、山城春樹(やましろ はるき)くんと、山城夏樹(やましろ なつき)くん。
二人共お人形みたいな綺麗な顔は、そっくりなんだけど、さっき話しかけた感じでは、春樹くんは、眠そうで不機嫌な猫みたいな印象で、夏樹くんは誰に対しても敬語で喋るような折り目正しい好青年という印象。見た目そっくり、中身真逆?
翼君は、「十神(トガミ)」っていう名字が珍しくて、鳥取出身なんだとか。
結局、なんのかんの、皆の名前、覚えちゃったな
あの金髪の人以外。