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虹の彼方で
第1章 Prologue
「重いー……」
小声でぼやきながらも、肩にかけたボストンバッグを揺らしながら、私は緩い坂を必死で上がっていた。
バス停から歩いて7分?
"ちょろいちょろすぎる"と思っていた距離は、予想外の高低差によって、初日から、"割りとキツめ”に認識を改められていたのです。高低差さん、いけず。まる。
「ふぅ」
胸の中でモノローグ調に語ったりしながら、なんとか坂を上がり終えると、目的の建物が目の前に表れた。
あ、ちょっと素敵かも。
緑屋根の大きな一軒家は、2階建てで、少し大きめの玄関扉だけ木目ハッキリの茶色。
壁はオフホワイトとベージュの中間くらい?
ここが、今日から私の家になる、女だらけの楽しい楽しい……、や、ちょっと怖い?シェアハウス♪
女ばかりだと、何かと面倒なことも起こるかもなんて思ったから、今日ばかりは私もきちんと感のある格好で、と白シャツに紺のワンピースという、メイドちっくなスタイルできめてみました☆
第一印象って大事だもんね。
確か、社会人から高校生までがいるんだったかな。
私と同じ高校3年生の子もいたはず。
っとと、一応、表札も確認……
「メゾン・ド・クルール。……よし、合ってる」
入り口の門扉の前で、ボストンバッグを足元に降ろし、ポケットからハンカチを取り出す。
5月の陽気って嫌いじゃないのだけど、流石に早足で坂道を上がると軽く汗をかく。
ハンカチで額を拭うと、ついでに首周りも拭いてから、もう一度、深呼吸してキモチを整えた。
「大丈夫。いけるぞ、ミサキ」
己に言い聞かせてから、私はチャイムを押した―――。