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虹の彼方で
第1章 Prologue
* * *
「麦茶でいい?」
「あ、はい。すみません」
「そこのソファ、座ってて」
「はい」
返事する前から座っちゃってました、ごめんなさい。
一軒家を改造してシェアハウスにしたという室内は、なんだかこざっぱりしてて、思ったほど女子女子していなくて安心した。
フリルたっぷりのカーテンとかあったらどうしようかと思ってたのだけど、見渡した限りでは女の子テイストのものが飾られていることは無くて、普通の家庭の中みたいというか、お隣さんの家にお邪魔した感じ?
しかも、
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
頭を下げて、向かいに座った人を見ると、自然と胸がときめいちゃう。
だって、女子ばかりと思ってたシェアハウスから、こんなイケメンのお兄さんが出てきたのだもの。
ほんの数分前のこと―――。
「―――はい?」
「あ、あの! 今日からお世話になります。白浜美咲です」
「え? ……しらはま、みさきさん?」
「はい」
「……あ、そうか…。ん……、とりあえず、あがって?」
眼鏡のブリッジを押し上げてから小さく頷いてくれたお兄さんは、陽射しに茶色混じりの髪の毛をキラキラ照らされてて、まるで夢物語から出てきてくれたみたいな格好良さだった―――。
(かっこよかったなぁ…、あははうふふ)
「美咲…ちゃん?」
「は、はい」
ちょっと前のことなのに、思い出し笑いしかけてた私の耳に、イケメンお兄さんのテノールが響く。
あー、名前呼ばれちゃった。
しかも、ちゃん付け♡
麦茶をテーブルに戻す動きで、私はスカートの裾がはしたなく広がってないか確認したりする。
女子だもの、気にしますわ、やっぱり。