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虹の彼方で
第6章 歓談

「以上です。何か、気になることがありますか?」

「んー…、ここって消灯とかあるの?」

「いえ。消灯時間も門限もありません。……基本的に、常識の範囲内であれば」

「分かった」

「あぁ、常識といえば」

私の部屋の前まで戻ってきた夏樹君は、私の部屋の扉を押し開けながら、口を開いた。

「初対面で、素性が分かってない男性を部屋に入れて、ベッドで会話をするのは、僕は感心しないです」

「え……、あ、うん」

夏樹君の微笑みは、相変わらずだったけれど、私は急に冷水を浴びせかけられたように、胸の奥がキュッと縮こまった。

「ちゃんと、鍵をして眠ってくださいね。お休みなさい、美咲さん」

どこまでも優しい口調のまま、穏やかに一礼した夏樹君は、……冷たい素振り一つ見せなかったのに、私は、何か飲み込みにくいものを口に詰め込まれたみたいな感覚を覚えていた。



部屋に入り、扉を閉める。



その手で鍵を締めてから、ドアに額を預けて……、なんとなく目を閉じた。



なんだか……、寂しいな。

笑顔で迎えいれてくれた人もいるのに、鍵かけなくちゃ駄目、かな……。

最初から、周りの人を疑って過ごすみたいで……、ちょっと、もやもやする。



「……寝る時に、かければいいよね?」



数秒その姿勢のまま悩んでから、誰かに言い訳するように呟いて、私は鍵を開けると、携帯を手にしながら、ベッドに寝転がった。



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