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虹の彼方で
第8章 ファーストキス

「んっ……ふっ、ぁ……」

重なった唇に、唾液が、まとわりついてて。

(溺れそう……)

生理的に滲む涙を、彼の指先が拭って、その指でトントンとこめかみの辺りをノックされた。

(あ、……そっか)

―――目、開けてろよ

そうだった、目、開けてなきゃ……。

酸欠になりそうな意識で、そっと瞼を持ち上げて、至近距離の、その顔に、胸がドクッと震えた。

「あ、……んっ、ふ……」

唇を歯で挟んで引っ張られて、一度インターバルが入る。

本気のキスって、こんなに、大変なの?

こんなに、ドキドキして、こんなに、恥ずかしくなるなんて、思わなかった……。

「あ、の……、ぁ」

「タクミ」

「え」

低く囁かれて、目を丸くする私の首筋に、彼の顔が埋まる。

「俺の名前、呼べよ」

掠れた声に、わけもわからず、ふわっと身体が浮き上がりかけた。





彼の部屋のセミダブルのベッド、そこに仰向けに押し倒されて、

私は今、"ファーストキス"を奪われていた。

大人の、本気の、ファーストキス……。




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