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虹の彼方で
第1章 Prologue
「あの、私、何かまずい状況、ですか?」
「ん……」
お兄さん、難しい顔してシルバーフレームの眼鏡をクイと持ち上げてる。
あ、そいえば。
「それより、あの……、大家さん? ですか?」
「え」
「えっと、私、女子だけのシェアハウスって、聞いてて…」
その言葉に、お兄さん、なんとも言葉にできない微妙な顔をしてから、静かに溜息をついた。
「僕は大家じゃないんだけど……。うん。
ここの住人は、今、全部で6人。高2が2人。高3が1人。大学生、専門卒、社会人が、それぞれ1人ずつ」
「へぇ…、じゃ、私と同級生もいるんですね」
なんとなく恐る恐る確認すると、お兄さんは微かに笑って頷いてくれた。
「そうだね。君と同級生もいる。
その、メンバーの名前ね、あそこに一覧になってるよ」
お兄さんの綺麗な指が、キッチン側を指差した。
男っぽくて節くれだってるのに、どこか女性的にも見える長い指が、またイケメン…。
そんなことを思いながら、私は指さされた方へ視線を向ける。
私達が座ってるリビング?みたいな大きな空間と、隣のキッチンは一間続きになってて。
優しい色合いの木で作られたダイニングキッチンが、視界を下半分遮ってる。
でも、お兄さんが指差したのは、開かれた上半分の奥の方。
ダイニングキッチンのウッド調と揃えられた色の、冷蔵庫付近だった。
何か貼ってある。
マグネット、かな?
目を凝らすと、何かの当番表が見えた。
あ、私の名前も、もうある…!
"美咲"という名前のネームプレートの横を見て……、見て……、私は……
「え、……え?」
思わず、お兄さんと顔を見合わせると、お兄さんが困った顔で頷くから
「え、え、え、……えええええええ!!!!」
閑静な住宅街をひっくり返す勢いで、大声で叫んでしまった……!
だって、他のネームプレートの名前、男だらけだったんだもの―――――!!