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虹の彼方で
第1章 Prologue
にしても、このお兄さんは、大家さん?
なんで女の園に、こんなプリンス系のお兄さんがいるんだろ。
あ、シェアハウスの誰かの恋人?
ありうる……。
女の園に、こんなイケメンを放ったら、女だって狼になりうる。
一瞬で妄想アクセル全開にしかけた私は、目があったお兄さんに首を傾げた。
あれ?
お兄さん、なんで、そんなに困った顔してるの?
「?」
「美咲ちゃんは、今、高校3年生なんだよね?」
「はい」
「で、受験が終わって大学1年まで、ここに住む。間違いないかな?」
「間違いないです」
うん、両親が仕事の都合で長期の海外出張になるから、一緒に来るかって聞かれて。
日本に残りたいって答えたら、お母さんがシェアハウスを探してくれた。
確か、向こう2年分の賃料は一括支払いしてるらしいし、ついでに、高校の転入手続きも終えてくれてて。
「そっか。君が、白浜美咲さん、なんだね」
「?? あの……」
「あぁ、いや。うん」
何か奥歯に挟まってしまったみたいなお兄さんの表情に、私も釣られて表情が曇る。
なんだろ…。
お母さん、賃料の振込、ゼロ一つ少ないとか……、やらかした?
わーお。
やらかすよ、あのお母さんなら、やらかすよ。
トイレの鍵あけないでドアノブをガチャガチャやって「でれなーい」とか言い出すし。
スーパーで精算してスッキリして、買ったもの全部をレジに置いたまま上機嫌で帰ってきちゃうし。
自分の本を図書館の返却ボックスに返しちゃうし。
うっかりが服着て歩いているようなマザーだもの。
……ありえーる。ありえーる、でしょ。