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虹の彼方で
第9章 土曜の朝

「ん? どしたー?」

翼の声に振り返り、勢いのまま彼に歩み寄った私は、「電話ある?」と切り出した。

色んなことがありすぎて忘れてたけど、お母さんに電話しなきゃと思ってたんだった……!!




翼に渡された子機で、海外へのコレクトコール?(良く分からないけど)をする。

お母さんってば、異国に到着した興奮で、最初は全く私の話を聞いてくれなかったけど、

最終的には

「ご厚意に甘えられるなら、甘えなさい! どっか引っ越すことになったら連絡くれれば、口座にお金、ちょっと多めに送るから!」

という返答……。

母よ。ここ、男所帯なんだよ?

『男なんて、皆、お父さんと一緒でしょ?』って、どういう発想やねん。

しかも『加齢臭が無いなら、お父さんより良いじゃない!』と続き、

『まぁ、お父さんは、まだまだ加齢臭なんてしないし、かっこいいけど』と電話越しで親の惚気を聞かされる私の身にも、なってほしい……。



通話ボタンを押して電話を切った私に、ゲーム機をセットしてた翼が笑う。



「なんか、大変そうだったネー?」

「うん。なんか、もうね。親の惚気を聞かされるって、凄いMP削られると思った」

「はははは、すごいラスボス感ある」

ひとしきり笑った翼は、笑顔のまま、私に向けてコントローラーを掲げる。

「やる?」

「ん……、うん。やりたい! あ、でも、待って!」



私は一度、リビングを出ると、大きな洗濯カゴを抱えて戻ってきて、窓辺にドサッと荷物を置いた。



「これ、干してから参戦させて?」



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