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虹の彼方で
第12章 ヨツキタのアイドル

「確かに、告白されたこと無いわけじゃないけど、言うほどアイドルとか、そんな人気者じゃねーよ。俺」

翼がむすっと唇を尖らせてる。

そうかもしれないけど……、でも、翼がモテるのは、なんとなく分からないわけじゃないんだ。

明るくて、勢いがあって、ストレートで。

笑うと時々見えるエクボが可愛かったり。

黒髪がクシャッとしてて、前髪から覗く眉は、意志が強そうで。

王子様っていうより、アイドルって感じ。分かる。

だから―――。

「でもまぁ」

「え?」

私が口を開くより、翼が心を決めるほうが、数瞬、早かった。

「"従兄弟"にしとく? それで、美咲を守れるなら、俺は、それで構わないし」

「……いいの?」

「うん。……女の集団って、恐ろしいこと平気でするイメージあるし」

「翼……」

「俺達は従兄弟同士で、大学受験が近づいて地方からこっちに出てきたお前を、俺の住んでるシェアハウスに招き入れた。―――とかで、いいんじゃね?」

「うん」

翼の提案に、私の顔は、目に見えて綻んだらしくて、「すげー分かりやすい」と指差して笑われた。

それでも、いいじゃん。

転校初日に、学校の過半数の女子を敵に回すとか、怖すぎて、本物の”三日坊主”になるかもしれないもの。

私、まだ出家したくない!

尼寺に行かずに済んだ安心感で、アイスティーを一息に飲むと、そんな私に、翼は、また「分かりやすい」と言って笑ってた。




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