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篠突く - 禁断の果実 -
第9章 過去編三話 守るということ

 父は時々、こうして悠に話しかける。

「悠、学校はどうだ」

 父は、娘である悠のことだけは溺愛しており、昔から大層可愛がっていた。
 彼の顔には朗らかな笑みが浮かぶ。だが、それも今となっては、つくりものの笑顔にしか見えないのだ。

「……うん、楽しいよ」

 一拍の間を置いて、悠は答えた。
 母の心の中には、弟の心の中には、どういった思いが渦巻いているのだろう。娘に対する、姉に対する、お門違いな恨みも少なからずあるだろう。何故、悠だけが暴力を受けていないのかと。建前はどうであれ、僅かでもそう思ったことはあるのだろう。
 孝哉はいつものように俯いて食事をとっていたが、悠は己の身を刺すような視線を感じて顔を上げた。そこには、いつも優しい笑みを絶やさぬ母の顔。口元は微かに弧を描いているのに、その瞳は微笑っていなかった。悠はゾッとして、思わず目を逸らした。

「悠ちゃん? 来年は、受験だねぇ。京都の大学を受けるんだっけ?」

 ゆっくりとしていて、まろやかな母の声。今までは優しいと思っていたそれが、狂気をはらんだものに聞こえる。孝哉は、弟は、いつもこんなふうに感じていたのだろうか。いや、恐らくもっとだろう。悠は事実を知っただけだが、孝哉は実際に暴力をふるわれている。
 人間というのは、自分よりも弱い者をいじめたがる。自分を制圧した人間が、目の前で嗤う。それがどれほど恐怖に駆られることなのか、悠には想像もつかなかった。
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