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おじさまと咲姫
第8章 抱擁
有無を言わさず歩みを再開され。
咲姫もまた足を進めるしかない。
後ろ髪を引かれる思いで車道の向こうを急いで見たが-もう、ふたりの姿は人の波に消えてしまった後だった。
咲姫が切なさに苦しい吐息を吐(つ)けば、昴の声が耳に届く。
「知り合いにたまたま道で擦れ違う事って、割とよくあるよね」
え?-咲姫が昴の横顔を見れば、その目が細められた。
「会社の人だって、この間言ってたし?」
サークルの新歓の帰り道。
『ユウさん』は連れていた小柄な女性を、自分達にそう紹介してくれた。
それが本当なのかどうかは-たった今、余計に分からなくなってしまったけれど。
そんな事は、口が裂けても言えないけれど。
でも。
大きなショックを受けてるだろう彼女を、例え気休め程度であれ安心させる事-他に思いつかなかった。
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