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おじさまと咲姫
第32章 意表
「キスしかされてないってーのっ!」
すぐに我に返ったが-遅かった。
最高に愉快そうに、悠眞の口角が上がった。
「…へえ?」
オフショルダーのブラウスから出ている肩まで、羞恥に染まったかのようだった。
耳まで赤くして、明後日の方向を向いてしまった咲姫を面白そうに一瞥し、悠眞はおもむろに立ち上った。
「部屋行って来る」
ひとこと告げて。
先程は彼女に遠慮して手にしなかった煙草とライターを、机の上から拾い上げる。
リビングの扉に向けて歩き出した悠眞に、咲姫は大いに拍子抜けしてしまう。
絶対何かを言われる覚悟だったのに。
一切のからかいなくリビングを抜けてしまいそうな悠眞の背中に、咲姫は呟く。
「…なんにも言わないの?」
悠眞は苦笑いして振り返った。
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