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おじさまと咲姫
第35章 未練
お盆数日前の、夕飯もシャワーも済ませた熱帯夜。
エアコンを入れ、程良く涼しくなった二階の部屋。
濡れた髪を乾かそうとドライヤーのコンセントを差し込んだところで、スマホが鳴った。
画面を確認すれば、ライン電話の着信を告げている。
驚き、一瞬躊躇ってしまったが-結局髪を乾かすのは暫し中断し、咲姫はその電話に出た。
スマートフォンを通して聞く、サークル旅行以来の彼の声。
その声音は-心なしか、少し緊張しているようにも思えた。
かく言う自分も正直なところ、どきどきしてしまってる。
お互い無理もなかった。
真面にこうしてふたりだけで話すのは、なにせあの夜の海での一件以来だった。
加えて彼がこうして自分に電話を寄越したのは-今夜が初めてだったのだ。
連絡をもらったとして、今までは全部ラインのみで済まされていたから。
鼓動が何倍にも重なり、速まってゆく-。
『円城寺…元気だった?』
遠慮がちに訊かれ、咲姫は僅かの間を経て答えた。
「…はい」
その返答にスマートフォンの向こう側で、昴は笑ったようだった。
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