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おじさまと咲姫
第43章 最初
「…映画、連れて行って下さい」
きりきり絞られてゆく胃の痛みに耐えていれば、思いも寄らないひとことを告げられた。
「えっ?」
自分が予想したどの言葉とも異なった。
驚きに次が続かない。
昴が沈黙のままいれば、咲姫は咎めるような口調で再度催促した。
「この間の映画、びっくりして内容が全然頭に入ってこなかった」
「…」
「とっても楽しみにしていたやつだから、今度こそはちゃんと観たいんです」
「…」
「驚かせた先輩が悪いんだから、責任とって次の日曜、私ともう一度映画に一緒に行って下さい」
-それとも何か、予定が入ってますか?
咲姫の声のトーンが一段下がり、昴は速攻で否定した。
「ない。なんにもない。…あ、でも夕方からはバイト」
言い終わらぬうちに、昴は急いで口を噤む。
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