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ランジェリー騎士団
第2章 仕立屋の提案
昨今、巷の婦女に絶大な人気を誇る流行の海外ブランド、ウェルヘルム。
リルデンガンツシュタットは海峡を挟んだローラルナの東側に位置する国だが、その高名は王の耳にも入っていたのだ。
「左様にございます」
侍従に肯定され、王の心に迷いが浮かんだ。
ウェルヘルムの名を前に、今日はお開きとはいかぬ、されど娘をつきあわせるのは……。
「お父様、わたくしなら大丈夫ですわ。それに、ウェルヘルムといえば、お付きのメイドたちの間でも話題ですのよ。是非、お会いしてみたいわ」
父の意を汲んだだけでなく、実際に興味もあるのだろう、ローザンナ姫は大きく開いた目を輝かせていた。
「ならば、あと一人だけ。フィガロ殿をこれへ」
そう告げて王はフェレリーにそっと視線だけを送る。ないがしろにしたわけではないということを示す心配りで、フェレリーもすぐにその意を理解して微かに会釈を返す。
「リルデンガンツシュタット国、フィガロ・ウェルヘルム殿……!」
侍従に招き入れられて広間に現れたのは二人の人物だった。
片方は背の低い、やや太った男だった。これが稀代の服飾設計士フィガロ・ウェルヘルムか。というのは、もう一方は女であったからだ。