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神は現で夢を見る
第2章 漆黒の乙女と薬師
「あのさぁ…………、薬師、」
「あ? 俺の名は『海(かい)』だ。間違えんなよ。晴明 」
「はいはい、どっちでも良いでしょ。つったく…………」
「良くないっ!! 薬師は、いわゆる『役職名』みたいなもんだって言ってるだろうが。お前にまで、『薬師』って呼ばれたく無いわ」
平安時代の日本家屋のような家の縁側に、男が2人、月を魚に酒を酌み交わしている。
『晴明』と呼ばれた方は、平安時代さながらの衣装を身に纏い、『薬師』と呼ばれた方は、21世紀の人界の成人男子が着るスーツを身に付けている。
あまりの時間のズレとアンバランスさ。
けれど、この場所では、それもしっくりくるように見える。
「なぁ、海。ひとつ言っておきたい…………。凪の事だ」
晴明の呼び掛けに、海はゆっくりと彼を見た。
「凪がどうかしたのか!? 」
「慌てるな、海。今はどうもしない。」
至って冷静な晴明に、海は、はぁっと溜め息を付く。
「脅かすなよ、晴明。凪に何か有ったかと………」
呟くように言いつつ、友人を見やる海は、眦を下げる友人を訝しげに見た。
晴明の表情が曇っている。
海は、それに気付いたのだ。
「なぁ、海。今回はイケたが、次、凪以外の乙女にしないか? 凪の魂をベースに新たな漆黒を混ぜて作るから、凪を諦めてくれ…………」
晴明のあまりの言葉に、海は耳を疑った。
親友は、一体何を言ってるんだ?
そう、疑念が浮かんだ。