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ランジェリーの勇気
第2章 破
自分自身の性格を変えるのは至難の業だ。自己啓発セミナーをやっているわけではないのだから、そんなことはできるわけがない。できることといえば、人から見えない範囲で、変えられるものをひとつづつ、変えてゆくことだ、と。実にプラクティカルで合理的な考え方に、その時の彼女には思えた。
襦袢の着替えで彼女の下着姿を見たときから、「もったいない」と思っていた、と婦人は言った。とてもキレイな体つきなのに、下着のお洒落を知らないのだと。安い国産のランジェリーではなく、ヨーロッパの高級な下着をつけると、背筋がしゃっきり伸びて、自然と胸を張るようになるのだ、と婦人は言った。和装を生業(なりわい)としているから余計に、洋装の基礎である下着に、自分の興味はゆくのだ、と語った。
そして彼女はその教えを守った。