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神さま、あと三日間だけ時間をください。
第1章 ♭眠れぬ夜♭
 別に大きな喧嘩をしたわけではない。なのに、二人だけでいることにいつしか慣れすぎてしまった―というのが最大の原因かもしれない。情熱だけで結婚はできるが、それだけで結婚生活を維持するのは難しいとはよく言われる科白だ。
 自分たちも、まさにそのとおりだったと美海は思わずにはいられない。しかし、二人の溝を決定的に深めたのは、やはり〝あの出来事〟だろう。
 結婚後、美海はすぐに子どもを欲しがった。琢郎と結婚して家庭に入るまでは、美海も市内では名の知れたデパートに販売員として勤務していた。二人が結婚したのは琢郎が三十歳、美海が二十八歳のときである。二十八という年齢はけして若いとはいえない。三十を目前にして、美海にもある種の焦りがあったのかもしれない。
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