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神さま、あと三日間だけ時間をください。
第4章 ♭切ない別れ♭

堂内にはちょっとした空間があり、片隅に祭壇が見えた。色褪せた朱塗りの厨子には、小さな弥勒菩薩がひっそりと安置されている。この御寺の本尊であり、本堂が昭和の時代に火災で焼け落ちた後も唯一、焼け残ったというものだ。
口伝によれば、出家して法明(ほうみよう)尼と名乗った大納言典侍の持仏であったという。最近になって、X線写真を使った調査から、仏像の体内には巻物状の紙が幾枚か納められていることが判明した。その紙はどうやら、吉野の後醍醐帝が典侍に宛てて送った書状らしい。
信頼していた足利尊氏に裏切られ、吉野に逃れるしかなかった数奇な運命の帝とその恋人の悲恋が偲ばれる逸話だ。
口伝によれば、出家して法明(ほうみよう)尼と名乗った大納言典侍の持仏であったという。最近になって、X線写真を使った調査から、仏像の体内には巻物状の紙が幾枚か納められていることが判明した。その紙はどうやら、吉野の後醍醐帝が典侍に宛てて送った書状らしい。
信頼していた足利尊氏に裏切られ、吉野に逃れるしかなかった数奇な運命の帝とその恋人の悲恋が偲ばれる逸話だ。

