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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第1章 しのちゃんの受難(一)
里見くんは、すぐに手を離して解放してくれる。けれど……近い、近い、ちか、近いっ!
思わず、手のひらで顎を押しやってしまう。
本当に、ちょっと待って。
里見くんて、こんな子だった? こんな、ガツガツ来る子だった? 私の記憶が確かならば……大人しいけど、芯のしっかりした、色恋には疎い子だったはずなのに、なに、この変わりよう!? セクシーすぎて怖い! 怖い、怖い! 大学生、怖い!
「俺、誠南学園の採用試験を受けます。佐久間先生から、この一年で教師とは何たるかを教えていただけることになっています。俺は本気で小夜先生を口説くんで、先生も本気で俺のことを考えてください。お願いします」
「は、はあ……」
「それは了承いただけるということでしょうか?」
「いや、いやいやいや」
「わかりました。善処します。お時間取らせてしまって申し訳ありません。今日から三週間、よろしくお願いいたします」
それだけ言って、里見くんは準備室を出ていった。私は口を開けたまま、それを見送った。
確かに、卒業と同時に里見くんから「好きです」と言われて、五年後に口説いてねと断ったけれども。
それは、五年の間で、私への恋心が消えるようにという意味だったのに。先生に恋をするなんて純情な初恋みたいなこと、大学生になったら、欲を優先させて忘れてしまえばいいと思っていたのに。
なに、この展開!?