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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第7章 しのちゃんの受難(四)
「風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ 砕けてものを 思ふころかな 」
――あなたに、振り向いて欲しい。
と、言われましても。
今は振り向けません。ちょっと難しいです。現在の状況からも、心理的な観点からも。
「小夜先生、好きです」
首筋に唇。
何度も、何度も、何度も、肌を求めてくる熱。
唇で上手に髪をよけて、うなじに、キス。
何度も、何度も、執拗にキスが繰り返される。
そのたびに、体が、腰が、震える。
「……っ、んっ、駄目っ」
泡を、落とさなきゃ。落として、手を拭いて、何してるのって、やめてって、言わなきゃいけないのに。いけないのに。
「小夜先生、好きにしていいって言いました」
「こういう、ことじゃ……ないっ」
こういうことじゃない!
確かに、好きにしてください、とは言ったけど!
それは、部屋の中で好きに過ごしてくださいって意味で……意味で……いや、断じて……こういうことじゃ……っ、あー、もう!
里見くんの指がするすると動く。結んでいたはずの指が外れて、お腹のあたりを撫でるように。
最近の私の体は、求められることに慣れていない。
最後に礼二に触れられてから、何ヶ月たったか忘れてしまうくらい、刺激に飢えている。
相手が誰だとか関係なく、ただ「求められている」ことに、体は、拒絶を示すことなく――悦んでいる。
「だ、めっ」
それは、駄目だ。
下腹部の疼きに、まだ理性が勝る。
それは、里見くんに失礼だ。誰でもいいわけじゃない。
その疼きに流されてしまったら、それこそ、淫乱だ。