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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第7章 しのちゃんの受難(四)
「……里見くん」
「は、はい」
「私はもう今年二十七です」
「はい。それが何か?」
「次に付き合う人とは結婚を視野に入れる歳です。なので、社会人が良かったのですが……」
私が梓に「里見宗介は学園に必要だ」と報告さえすれば、里見くんは学園の教師として採用される。
だとすると、一年後には里見くんは社会人で、私の同僚になるということだ。
社会人、という条件は、今はまだクリアになっていなくても、一年後にはクリアされる。
それを、どう捉えるか。
「私、里見くんのこと」
好きかどうかと問われたら、それはまだわからない。嫌いではない、という事実があるだけで。
けれど、結婚相手として考えたら、里見くんは案外悪くない。
「教師」という仕事には理解があるだろうし、年収もだいたいわかる。
これだけ一途に想ってくれるなら、礼二みたいに浮気をする心配はしなくてもいいのかもしれない。誠実なのは、重要だ。
年齢は少し離れているけれど、ものすごく離れているわけではない。
「嫌いではありません。ただ――」
そう。ただ、同じ条件の人がもう一人いる。稲垣くんだ。
稲垣くんも、私と付き合いたいと言ってくれている。結婚まで考えているかはわからないけれど。
大石先生の後任として採用されたら、稲垣くんも里見くんと同じく、私の同僚になるだろう。
教師になったら私と付き合えるかもしれないと喜んでいる子を、除外して考えることはしたくない。
チャンスは平等に与えるべきではないか、と思うのだけれど、それは傲慢だろうか。