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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第7章 しのちゃんの受難(四)
「稲垣くんも同じだと思うので、今はどちらかに決めることはできません」
うん、稲垣くんに抱きしめられてみないと、わからない。
私の体に拒否反応が出るかもしれない。出ないかもしれない。
里見くんと同じく、受け入れようとするかもしれない。それはわからない。
「……なんで、そこで稲垣が出てくるんですか」
「稲垣くんも里見くんと同じだから」
「何、言ってるんですか。同じじゃない。同じじゃないですよ!」
ぎゅう、と強く抱きしめられる。
里見くんは怒っている。怒っているのだとわかる。
確かに、自分の想いと他人の想いを同列に扱われたら、腹が立つよなぁ。
でも、私にとっては、本当に同じなのだ。
どちらの愛がより大きいだとか、より深いだとかは、わからないのだから。
「俺は、ずっと小夜先生だけを想っています。今までも、これからも。でも、稲垣は、最近彼女と別れたから、寂しいから小夜先生にアプローチしているだけですよ! そんな、中途半端な気持ちの稲垣と、同じだと思われたくありません!」
へ、へぇ、稲垣くん、彼女と別れたばかりだったんだね。それは初耳。それは確かに、寂しいかもしれませんね。
「それに、稲垣は長尾と……英語の実習生の長尾と仲が良くて、節操がないと思います」
まぁ、でも、それは里見くんの勘違いかもしれないし。
「長尾と稲垣、高校時代に付き合っていましたから」
あ、元カノでしたか。
それは、想いが再燃したり、しなかったり、するかもしれませんね。よくあるパターンですね。