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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第11章 【回想】里見くんの決断
「里見くん、私と付き合わない?」
「付き合わない」
「即答だねぇ。テキストはいらないの?」
「先輩からもらうよ。じゃ、さよなら」
手早く荷物をまとめると、大きくため息をつく。勉強場所をまた見つけなければ。
本当に、馬鹿な女。
食堂のコーヒーに玉置珈琲館のブレンドコーヒーが使われているから、ここが気に入っていたのに。最悪だ。
「ちょっと、待って! 里見くん!」
椿が慌てて追いかけてくる。
あぁ、もう、本当に迷惑だ。そのテキストならあげるから、ついてこないで欲しい。
「私、本当に里見くんのことが好きなの!」
「俺は好きじゃない」
「知ってるよ、しの先生のことまだ好きなんでしょ?」
俺は早歩きで逃げる。椿は小走りで追いかけてくる。
迷惑だ。とてつもなく迷惑だ。
「私、二番目でいいから!」
一番になろうともしない人間の言葉に耳を貸す道理はない。
なんで、好きな人を前にして「二番目でいい」なんて言えるんだ? 失礼だろ。相手にも、自分にも。
もう少し、自分を大事にしろよ。「あなたの一番にして!」くらい、言えよ。
馬鹿じゃねえの。
俺は最初から、一番しか目指さない。椿の考えは、受け入れられない。