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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第1章 しのちゃんの受難(一)
結局、教育実習日誌の記入、教材研究と指導要領の読み込み、明日の予定の確認で時間切れ。実習生は二十時以降は帰宅させないといけないので、生徒観はもう少し先になりそうだ。
私は、そのあとで小テストの採点と記録、日誌へのコメント、明日の準備、佐久間先生と打ち合わせをしてから二十一時過ぎに帰宅した。
とは言っても、誠南学園の独身寮は近くにあるので、徒歩十五分で帰宅できるのはありがたい。今日は自転車だったので、もっと速い。
里見くんから貰ったピアスは、ラウンドカットの赤色の石が輝くシンプルなデザインのものだ。ガーネットほどは深くない、けれど、よく光を反射して輝く少しピンクがかった赤い宝石。つまりは、ルビーだ。
ホワイトゴールドだという土台の細工も綺麗。高かったんだろうな、と思うと、申し訳なく思えてくる。大学生にこんな高価なものを買わせてしまった罪悪感。
そして、つけてみて、さらに驚いた。
「私、赤が似合うんだ……」
そのピアスは驚くほど私の耳に、体に馴染む。最初からそこにずっと存在していたかのように、しっくりと。
それだけで、里見くんが、私だけのために、私を想って購入したものだと、わかる。痛いほどに彼の愛情が伝わってくる。そういうプレゼントだ。
なんで、こんなことに?
それが率直な感想だ。
里見くんの気持ちは嬉しいけど、本当に、なんで?