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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第13章 しのちゃんの受難(八)
「ん?」
スマートフォンの通知ランプが点滅している。見ると、梓からメッセージが届いている。
……やばい。「教育実習中に恋仲にならないように」と、釘、刺されていたんだった。忘れていた。
けれど、ドキドキしながら開いたメッセージは、拍子抜けするほど簡潔だった。
『明日、里見宗介の報告書見せて』
まだ、ご両親から私たちのことを聞いていないのだろうか。それとも、興味はないのだろうか。
まぁ、余計なことは言わないでおこう。
『明日、三時間目なら空いているけど、その時間でいい?』
『いいわよ。じゃあ、待ってる』
宗介用の報告書――生活態度や生徒への関心度、ホームルームでの話題、授業の内容、同僚になったときの予想など、リスト項目にボールペンでチェックをつけながら、最後の項目で手が止まる。
報告書を最初に確認したときは気づかなかったけれど。
「……梓め!」
報告書を丸めてぐちゃぐちゃにしたい気持ちを抑えて、最後の項目に目を落とす。
【里見宗介とヤッた?】
イエス? ノー? どちらでもない?
シャープペンシルでピッと薄くチェックを入れて、ため息をつく。
まったく、もう。
「何でそこだけ鉛筆で手書きなのよ」
消されることが前提のチェック項目。
梓も、昔から悪ふざけが過ぎる人だ、本当に。