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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第13章 しのちゃんの受難(八)

「……ブライダルといえば、木下先生も結婚を決めたみたいだから、おめでたい話よね」
「え、もう決めちゃったの? 早いなー」

 出会って一週間で結婚を決めてしまうとは、不思議なものだ。礼二とは六年付き合ったけど、別れてしまった。でも、二週間で宗介と関係を持ち、結婚すると決めてしまった。

 人生の伴侶を決めるのは、年月ではなく、「勢い」なのかもしれない。

「あぁ、相手は知り合いなんだっけ?」
「いや、全然知らない人。すごいイケメンだった」
「イケメン、ねえ……堅い職業だって言っていたけど、木下先生の服装を見る限りは、センスがいいと思うわね」
「そうだね、センスいいよね。警察の方みたいだけど」
「警察官? 警視庁?」
「いや、名刺には警察庁警部って書いてあった」

 梓は少し情報を整理して、「へぇ!」と笑う。

「年下キャリア捕まえたのね、木下先生!」
「よく、わかったね。年下だって。確か五歳下だよ」
「木下先生の年齢だと、警視か警視正あたりの階級の方が適切だと思うけど、相手は警察庁の警部なんでしょ? じゃあ、二十八よりは下でしょうね」

 そのあたりの組織の仕組みはよくわからないけど、梓の言うことに「へえ」と相槌を打つ。

「再来月の木下先生の誕生日に式を挙げるみたいよ。近いうちに木下先生から挨拶をしてもらうから、それまでオフレコにしておいてちょうだい」
「うん、わかった」

 二十九歳の誕生日に結婚式かぁ。
 人によっては「焦ったのではないか」と笑うかもしれないけど、そして実際、智子先生は焦っていたけれど――そんな言葉に負けないくらい、彼女には幸せになってもらいたい。
 たぶん、いや確実に、美男美女の二人はウエディングドレスもタキシードも似合うだろう。めちゃくちゃ似合うだろう。モデルさんが霞むくらい、お似合いの二人だもの。
 次元が違いすぎて、私たちの参考にもならないと思うけど、彼女たちの式はとても、楽しみだ。
 あ、でも、式や披露宴には職場の人を呼ばないかもしれないから、そのときは写真だけでも見せてもらおう。
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