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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第13章 しのちゃんの受難(八)

「今週の土曜は出勤?」
「うん。三年生の学力診断テスト。模試ほど時間はかからないと思うけど」
「そう。昨日はうちに来てくれてありがとう。父も母も喜んでいたわ。ケーキも美味しかったわよ」

 梓の分もあったのね、一華堂のケーキ。またお祝いごとがあれば、食べたいなぁ。高いし並ぶから、当分はいいけれど。

「また、行くよ」
「そうね。両親が喜ぶわ」

 どこか他人事のように梓は言って。

「ねぇ、小夜」
「うん?」
「里見宗介の愛は、ちゃんと本物だから」
「……え?」

 梓の言葉の意図が読めなくて、首を傾げる。
 うん、本物だと思って、いるよ? まぁ、ちょっと怖いし、だいぶ重いと思うけど。

「――あなたは、幸せになるのよ」

 梓の言葉の意味は、やっぱり最後までわからなかった。
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