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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第14章 【回想】里見くんの協力者
「……よくまとまっている資料だと思うわ。どうやら、私のこともしっかり調べたみたいだし」
「ありがとうございます」
「だからこそ、なんだけど……なぜ、誠南学園なの? 普通に教採を受けて地方公務員になる道では駄目だという理由を教えて」
これは、賭けだ。
彼女の両親から聞いた話を総合して解釈したけれど、彼女の思いをまだ理解できていない――だから、非常にリスクの高い、賭け。
「学園内に、どうしても手に入れたい人がいるんです」
「……へっ?」
学園長代理の目が丸くなる。意表をつかれたのだろう。当たり前だ。
経営理念に賛同するでも、校風が好きだからでも、教えることが好きだからでもない、と言うのだから。
ただの私的な個人的な感情で、ここまで来たのだ。俺は、あの人を手に入れたい。
「篠宮小夜先生のことが好きです。自分は一度振られています。でも、諦められないんです」
「……彼女には恋人がいるわよ?」
「存じております。けれど、どうしても、高村さんが篠宮先生を幸せにできるとは思いません」
「……なぜ、そう思うの?」
高村礼二の悪いところなんて山ほどある。
何度も浮気を繰り返して、何度も嘘をついて、小夜先生を裏切っている。小夜先生の心を弄び、彼女の大切な時間をただ奪っている。
本当に、腹立たしい。
「彼は……彼が、篠宮先生を愛していないからです」
本当に愛していたら、浮気はしないし、嘘もつかない。そんな酷いことを恋人にできるわけがない。